タイ駐在MDの泥沼奮闘記!経営崖っぷちからV字回復を狙う
タイの工場に赴任してきた日系中小企業の責任者です。経営状況はあまり良くありません。
タイで働く苦労や衝撃体験などを紹介できれば幸いです
「残業は美徳」は幻想?
どうも、皆さん!タイの熱気と喧騒にもまれながら、今日も奮闘中のMDこと、タカです。
バンコクのオフィスから、車で1時間半。毎日通うこの工場は、僕にとって戦場であり、同時に愛着の湧く大切な場所でもあります。うちの会社、車載部品を作る中小企業なんですけどね。ぶっちゃけ、経営状況は芳しくない。V字回復どころか、今は「L字型で地面を這いつくばってる」ってのが正直なところ(苦笑)。
そんな崖っぷちの状況で、僕が真っ先にメスを入れたかったのが、まさに「働き方」。日本にいた頃は、残業ってどこか「頑張ってる証」みたいな雰囲気、ありましたよね?遅くまで会社に残って、ヘロヘロになりながらも「俺、やってるぜ!」みたいな自己満足。でも、タイに来て、それがとんでもない幻想だったってことに気づかされたんです。
残業大国タイ!?…からの「なぜ残業?」の壁
赴任当初、工場の稼働状況を見て、正直、目玉が飛び出ました。みんな、残業してるんですよ。毎日。しかも、結構な時間。日本の製造業なら「稼働率が低いから残業しなきゃ」って感覚もあるでしょうが、うちの工場、そこまで生産量が多いわけでもない。むしろ、閑散期もある。
「なんで、こんなに残業してるんだ?」
僕は素朴な疑問を抱きました。そして、スタッフに尋ねてみたんです。
「残業しないと、給料が少ないから」
即答でしたね。まるで、それが当たり前かのように。
愕然としました。彼らにとって残業は、生活費を稼ぐための「手段」だったんです。「仕事が終わらないから残業する」のではなく、「残業しないと給料が少なくて困るから、仕事を引き延ばす」という図式が見え隠れしました。これじゃ、生産性なんて上がるわけがない。むしろ、ダラダラ仕事して、時間単価の高い残業代を稼ぐ方が彼らにとっては合理的なんですから。
「残業は美徳」どころか、会社の首を絞める悪魔の習慣だったと気づいた瞬間でした。
働き方改革、始まる…はずだったのに
これはマズい。抜本的な改革が必要だ!そう意気込んで、僕は「働き方改革」を宣言しました。
「これからは、定時で帰ることを目指そう!」
「生産性を上げて、残業しなくても十分な給料が稼げる仕組みを作る!」
スタッフの反応は…正直、微妙でした。
最初は「お、MD、なんかいいこと言ってるぞ?」みたいな顔をしてた人もいたんですけど、しばらくすると、「でも、残業しないと…」とモゴモゴ。中には「MDは給料高いから、残業代なんて関係ないんだろう」みたいな視線を送ってくる人も。
そう、彼らにとって、残業代は決して「おまけ」じゃない。生活を支える上で、なくてはならない重要な収入源だったんです。いきなり「残業なし」と言われても、困るのが本音。
そこで、僕はアプローチを変えました。
「残業を減らすと、こんなに良いことがある!」プレゼン大会
いきなり残業をなくすのは無理。じゃあ、どうするか?
「残業を減らすメリット」を、徹底的に伝えることにしました。
- 家族と過ごす時間が増える!
- 趣味に打ち込める!
- 新しいスキルを学ぶ時間ができる!
- 早く帰って、屋台で美味しいご飯を食べる!
タイ人の生活に密着した、具体的なメリットを羅列しました。最初は「またMDがなんか言ってる」って顔で聞いてたスタッフも、徐々に「へえ、それも悪くないかもな」という表情に。
特に効いたのが、「残業代はあくまでボーナス。定時内に効率よく仕事して、スキルアップすれば、基本給を上げるチャンスがある」という説明。これにはみんな、食いつきましたね。目の色が変わった人もいました。タイ人は、自分のスキルアップやキャリアアップには非常に貪欲な傾向があるんです。
そして、具体的な施策として、以下のことを実施しました。
- 業務の見える化と効率化: 誰が何をどれくらいの時間でやっているのかを明確にし、無駄な作業を排除。
- スキルアップ研修: 専門知識や技術を学ぶ機会を提供し、一人ひとりの業務範囲を広げる。
- 目標設定と評価制度の導入: 定時内でどれだけ成果を出したかを評価し、ボーナスや昇給に反映させる。
これ、言うは易し、行うは難し。だって、みんな長年のやり方があるわけでしょ?それを変えるってのは、かなりのエネルギーが必要なんです。
悲喜こもごも、しかし確かな変化の兆し
働き方改革は、一筋縄ではいきませんでした。
「MD!この作業、定時じゃ終わらない!」と、毎日誰かしらが僕のところに泣きついてくる。
「いや、効率よくやれば終わるはずだ!」と僕。
「いやいや、無理!絶対無理!」と彼ら。
正直、何回ブチ切れそうになったか分かりません。でも、そこで感情的になったら終わり。粘り強く、彼らが納得するまで説明し、一緒に解決策を考えました。
ある日、生産ラインのリーダーが、真剣な顔で僕のところに来ました。
「MD、この工程、こうやればもっと速くできます!」
聞けば、彼が独自に考えた改善策。しかも、かなり理にかなっている。これには驚きました。そして、心底嬉しかった。
残業は、まだゼロにはなっていません。でも、確実に減りつつあります。
そして何より、スタッフの表情が変わりました。以前のような「早く残業したい」という空気ではなく、「どうすれば定時で帰れるか」を真剣に考えるようになったんです。
定時で帰るスタッフが、嬉しそうに家族と電話で話す姿を見た時、「ああ、やっててよかった」と、心から思いました。
泥沼は続くよ、どこまでも…でも、光は見えてきた
もちろん、経営がV字回復したわけではありません。泥沼は続いています。
でも、「残業は美徳」という幻想から目覚め、社員一人ひとりが「どうすればもっと効率よく、良い仕事ができるか」を考え始めた。これは、間違いなく大きな一歩です。
働き方改革は、単に残業を減らすことだけじゃない。社員の意識を変え、会社全体の生産性を上げ、そして彼らの人生を豊かにすること。そう信じて、僕はこれからもタイの工場で奮闘し続けます。
次回は、そうですね…「品質は神様!タイ人スタッフと『Made in Japan』を死守するMDの熱血指導録」あたりについて書こうかな。品質管理も、これまた奥が深いんですわ…。
ではまた!コップンカップ!
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