生産性の壁を乗り越えろ！タイ工場改革の最前線

タイ駐在MDの泥沼奮闘記！経営崖っぷちからV字回復を狙う

タイの工場に赴任してきた日系中小企業の責任者です。経営状況はあまり良くありません。

タイで働く苦労や衝撃体験などを紹介できれば幸いです。

タイ工場で生産性の壁を乗り越えろ！

皆さん、サワディカップ！タイで車載部品メーカーのMDを務める、タカです。

今日は、まさに今、僕が直面している「生産性の壁」との死闘について、包み隠さずお話ししようと思います。なにせうちの会社、経営状況はまさに崖っぷち。この壁をぶち破らなきゃ、マジでヤバいんです。

タイ工場、なぜか「伸びしろ」しかない現実

ウチのタイ工場は、日本の親会社から見たら、きっと「伸びしろしかない」って思われてるでしょうね。でも、僕から言わせれば、それはつまり「現状がヤバすぎる」ってことの裏返しですよ、ハハハ……（乾いた笑い）。

工場に赴任してまず驚いたのは、その独特の時間の流れでした。日本で「秒速」を争っていた僕からすると、タイの「マイペンライ（気にしない、大丈夫）」精神は、まさに生産性の大敵。部品を組み立てるラインで、なぜかみんなでスマホをいじってる……いやいや、その手の器用さは他で活かしてくれ！って心の中で叫びましたよ、ええ。

ある時、生産数をどうしても上げなきゃいけない日があって、僕は現場に張り付いて、一人ひとりに声をかけ続けたんです。「あとちょっと！」「がんばろう！」って。そしたら、普段は無口なラインリーダーが、ニヤリと笑って一言。「タカさん、日本人はいつも急いでますね。でも、急いだとしても生産性は変えられません。」…… 変えられないか…… いや、変えられるだろ！と突っ込みたくなりましたが、そこはグッとこらえました。彼らの感覚では、生産数を上げる＝品質を犠牲にする、という思い込みがあるようでした。これが、まず最初の「生産性の壁」でしたね。

品質問題、それは突然に

生産性向上に取り組もうとすると、今度は品質問題が勃発するんです。まるでモグラ叩き。ある日、日本からのクレームが入りましてね。「今回の部品、穴の位置が微妙にズレてるんですけど！」って。すぐに現場を確認すると、検査工程でまさかの「目視スルー」。いや、目視するならちゃんと見てくれよ！と。

聞けば、その日の検査担当者が、どうやら前夜の友人との飲み会で深酒し、二日酔いだったらしいんですよ。「いや、それ業務に関係ないから！」って言いたいところですが、そこはタイ。個人の事情は、時に仕事に優先する。これがタイ流なんですよね。正直、この緩さに最初は頭を抱えました。怒鳴り散らしたところで、逆効果になるだけ。むしろ、彼らのプライドを傷つけたら、もっと動かなくなる。

そこで僕は考えました。「どうすれば、彼らが自発的に、しかも楽しみながら品質向上に取り組めるか？」と。導入したのは、不良品ゼロ達成チームへの「スペシャルランチ」のインセンティブです。これが意外と効果テキメンで。美味しいものに目が無いのは万国共通。ランチがかかると、彼らの目つきが変わるんですから、人間って面白いですよね。おかげで不良品は激減しました。まさか食事が「生産性の壁」を乗り越えるカギになるとは思いませんでしたよ。

部品調達、タイの洗礼

生産性向上には、安定した部品調達も不可欠です。しかし、これがまた一筋縄ではいかない。ある時、主要部品のサプライヤーから突然連絡が。「すみません、明日から1週間、材料が入りません」って。理由は「サプライヤーの工場が洪水の被害に遭った」とのこと。いや、それは仕方ない。でも、前日に言うか普通！？

タイでは、自然災害や政治情勢の変化など、予測不能な事態が頻繁に起こります。日本の感覚で「計画通り」なんて思ってたら、痛い目を見る。このサプライヤー問題も、まさに「生産性の壁」でした。

結局、僕らは急遽、現地で別のサプライヤーを探し回り、なんとか凌ぎました。でも、その間に生産ラインは止まり、納期は遅れる。この経験から学んだのは、サプライヤーの多角化と、常にBプランを用意しておくことの重要性です。日本の「石橋を叩いて渡る」精神を、タイでは「石橋がなくても泳いで渡る」くらいの柔軟性が必要だと痛感しましたね。

人材育成、それは長期戦

そして、最も根深く、かつ重要な「生産性の壁」が、人材育成です。特に、中間管理職の育成は喫緊の課題です。彼らが育たないと、僕がいくら現場に張り付いても、結局は僕がいないと回らない属人的な組織になってしまう。

日本の工場では当たり前の「報連相（報告・連絡・相談）」も、タイではなかなか浸透しない。何か問題が起きても、こちらから聞くまで言わない、なんてことは日常茶飯事です。

僕は毎朝、工場長や各部署のリーダーたちとミーティングを開くようにしました。最初はみんな下を向いてばかりで、発言も少ない。そこで僕は、彼らの意見を絶対に否定しない、どんな小さな意見でもまずは聞く、ということを徹底しました。そして、成功体験を共有し、彼ら自身に「できた！」という実感を持たせることを意識しました。

ある若手リーダーが、ずっと抱えていた製造ラインの問題点をミーティングで発言した時、僕は大げさなくらいに褒め称えました。「よくぞ言ってくれた！素晴らしい！」って。そしたら、他のメンバーも少しずつ発言するようになってきて。小さな変化ですが、彼らの主体性を引き出すことが、「生産性の壁」を乗り越える上で最も大切なことだと感じています。まだまだ道半ばですが、彼らが自分の頭で考え、行動できるようになる日が来ることを信じて、僕は彼らと泥臭く向き合い続けるつもりです。