海外の日系企業で働くときに求められる日本人の役割とは

タイでの就職活動は常に売り手市場

海外で仕事をしたいと思われたら、先ずはどのような求人が募集されているのか、インターネットで検索して調査してみて下さい。

「タイ就職」をGoogleで検索すれば、簡単に10社以上の人材紹介会社が見つかると思います。それら人材紹介会社のWebサイト上には、最新の日本人の求人案件が紹介されています。

常に多数の案件が掲載されているので、その求人案件の数だけを見れば、はっきり言って応募側の売り手市場です。つまり、求職者の方が、就職先の企業を選べる立場にあります。

たしかに各求人の詳細情報を確認していけば、自分自身の職歴に合致しないものが多いかもしれませんが、多くの企業では、応募者が業界未経験者であったとしても、求める人物像に合致していれば採用することも多くあります。また、人材紹介会社によっては、Webサイト上に掲載しない、非公開の求人案件を持っていることも多くあります。

本記事では、このような求職者側に有利なタイの人材紹介市場において、日本人がタイの日系企業に就職した場合に求められる役割を紹介します。タイでの事例を挙げていますが、特にASEAN諸国では同様の傾向と考えています。

タイの日系企業の日本人顧客が取引相手

タイの日系企業が日本人を採用する必要がある理由は、以下のような条件を満たす人材を必要としているためです。

  • 日本での就労経験があり、日本のビジネス慣習を理解していること
  • ネイティブレベルの日本語で仕事を行えること
  • 日本人顧客との日本語による関係構築でビジネス関係を円滑にする

この条件に当てはまらない人材が必要な場合には、タイ人を採用します。つまり、タイ人よりも倍以上の給与を支払う必要のある日本人を雇う理由は、会社の業務において日本人が必須だからです(タイ人の大学卒の新卒者に対する初任給は15,000バーツ程度ですが、日本人の雇用者にはワークパーミットを取得するために最低50,000バーツの給与を支払う必要があるためです)。

これは、顧客である日系企業の日本人の方に対して日本語で営業する必要がある、タイ国内の経営状況を日本本社に報告する必要があるなど、日本語や日本のビジネス慣習を土台にビジネスをする必要が求められているからです。

そのため、あなたがタイの日系企業の求人に応募しようと考えているのなら、上記のようなことは当たり前なので、求人情報に記載されていないと考えて下さい。上記2点が逆に満たせないのであれば、日系企業への求職を応募したとしても、相手の企業からは求められている人物とは違っていると理解したほうが良いと思います。

中には社会人経験が無い新卒の方の採用を行っている日系企業もありますが、そのような会社ではOJT(On-the-Job Training)を通じて、日本式のビジネス慣習を学ばようとを考えていると思います。ですが、新卒社会人を十分に教育できるような環境を社内に有している企業は、タイにおいて殆どないと思います。例え日本では大企業であったとしてもです。

社外と社内の架け橋的な存在

タイでの日本人に対する求人募集で圧倒的に多いのが営業職です。

日本人の営業は、日系企業の顧客から要望を日本語でヒアリングし、それを自社内で関係者に伝達する役割が求められます。

伝達する目的は、自社内のエンジニアや開発者、購買担当者などがタイ人であることが殆どのためです。そして、社内のスタッフに対して顧客の要望を英語やタイ語で説明することが求めらられます。

このように社外と社内の情報伝達を円滑に行うための、いわばコーディネーター的な役割がタイや、その他の国々でも求められています。逆に言えば、このコーディネーター的な役割と供に、主業務となる営業などを併せてビジネスを行えることが、海外における日本人の強みになります。

一方で、単なる顧客の要望を聞き、自社の関係者に伝達するだけのメッセンジャーになってしまうと、業務自体に対するモチベーションが下がり、退屈に感じてしまうかもしれません。そのため、仕事を自身で積極的に拡大していく提案力や責任感がなければ、仕事が合わないと考えてしまい、すぐに転職したくなってしまうと思います。

採用面接ではロールモデルを確認

自分自身の思い描く海外ビジネスの現場で活躍する姿が、一体どういった役割なのかを、就職活動を開始する前に、しっかりと考えた方が良いと思います。

そして、採用面接を受ける際には、面接官の方に以下のような質問をしてみることで、実際の業務とのギャップを確認することができると思います。

  • 自身の応募するポジションの社員は、どのような役割の業務を担っているか?
  • 1日のスケジュールは大体どんな感じなのか?
  • 募集しているポジションの日本人に対して、一番に求める責務とは何か?

就職を決めるまでに出来る限りの情報を収集することをおすすめします。実際に働き出してみると、入社前に考えていたような役割と違ってしまうことで、自身の就職活動が失敗だったと感じてしまうこともあると思います。失敗を極力起こさないためにも事前のインターネットを使った情報収集や、面接時の質問などによる確認が重要となります。

最初に言いましたが、売り手市場なので、採用されるまでのハードルは低いと思います。だからこそ、貧乏クジを引くようなことにならないよう、就職先は決めてください。

それでも駄目な企業に入社してしまったら、失敗したことをあまり気にせず、すぐに気持ちを切り替えて転職活動を再開するのも1つの手ですが。